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㊦ プロローグ
綺麗な女だ。
そう思った刹那。
「おまえの顔も、綺麗に『なった』よ」
男が言う。
「いまの手術は進歩しているからな」
なにが言いたい?
「『あの痕』は完璧に消えてる。誰もおまえだと分かりゃしないさ」
いまさらそんな心配をされても困る。
「ついでに、せっかくだから、ちょいと美形にしてやった」
恐ろしくどうでも良い。
男は呑気な様子で、黒革のソファーにもたれた。
「そのお嬢さんと、おまえ。美男美女で、以外とお似合いだな。ガハハハハ」
八月の午後二時。
窓のないクーラーの効いたこの部屋は、電気だけが明るかった。
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