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〈プルルルルーーー〉
いつも通りの、聞き慣れた音。
いつも通りの、見慣れた風景。
通り抜けていく風の冷たさも、消えることのない足音も、ホームに響く女性のアナウンスも。
何一つ変わらない。
〈ドアが閉まります。足元に十分お気をつけ下さいーーー〉
この駅から高校に通って、今年で二年目を迎える。
電車通学は初めてで、最初は戸惑ったけど、何回か使ったことのある路線だったので、すぐに行き方は分かった。
人がまばらになり、落ち着きを取り戻した駅を残して、電車は徐々にスピードを上げていく。
カタンコトン、カタンコトンと、一定のリズムを刻み始める。
車内は、スーツを着たサラリーマンや制服を着た学生達でごった返している。
よく見ると、中三の頃第一志望にしていた高校の制服を着た人もいる。
坊主頭ってとこから考えて、野球部かなんか?
ちらりと見えた彼のスポーツバッグには、『星光学園野球部』とプリントされていた。
そう言えば、野球の名門だったんだっけ。
そしてその彼は、私と同じくらいの背丈の女の子と、ニコニコ話している。
自然と胸が温かくなって、表情筋が緩んでいくのを感じた。
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