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<キキィ―――>
「!」
「ご、ごめんなさい・・・」
足の力を抜いてしまっていて、突然のカーブに上手く対処できず、私は正面にいる高校生に抱きつく様な形をとってしまった。
しかも男子の。
二つの意味を込めて、私はぺこりと頭を下げた。
カタンコトン、カタンコトン・・・
電車のリズムは変わらない。
「大丈夫ですか?」
両肩に優しく触れて、彼は優しくそう尋ねた。
「大丈夫です。・・・あの・・・・・・」
ゆっくりと、私は彼から肩の方へ視線を移していく。
知らない人から触れられるのには、少し抵抗がある。
「え? あ、すいませんっ!」
この言葉から、彼には下心がないことが明白になった。
彼は少し気まずそうにしながら、遠くを見つめていた。
「あ、いえ、ありがとうございました」
・・・親切な人で良かった。
タタンタタン、タタンタタン・・・
いつの間にか、降りる駅の二つ前まで来ていた。
タタンタタン、タタンタタン・・・
・・・あれ、この音、何だろ。
電車が走る音とはまた別の音が、聞こえる。
昔から耳が良くて、結構距離があっても聞き取れる。
<♪~>
こういうの、ロックっていうのかな。
それとも、バンド?
そんな音楽が、近づいてくるのを感じた。
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