#1 ~声~

7/8
前へ
/10ページ
次へ
「ん、んん・・・」 ここは、どこなんだろう。 ホームのベンチ? 膝裏にひんやりとした金属の冷たさを感じ、閉じていた目を開けていく。 蛍光灯の白光が、やけに眩しい。 「大丈夫すか?」 私の横には、男性が座っていた。 この人、誰? でも、どこかで見たことがある気がする。 「え、あ、はい・・・」 「あの、私は・・・」 重たい頭を起こし、私は顔見知りのような気のする彼に聞いた。 すると、彼は腕を組みかえてこう言った。 「急に倒れて、それから近くにいた男の人がこの駅に降ろしたんス」 『近くにいた男の人』ってことは、この人じゃないんだ。 「なんか、背が高くて、髪が赤黒い人」 ・・・あの人だ。すぐに分かった。 妊婦さんに席を譲った、あの人。 それと・・・ 今隣にいる人のことも、思い出した。 私が、電車で思わず抱きついてしまった人。 「なんで俺なの? って感じですよね」 「・・・はい」 「『目が覚めるまで一緒にいてやってくれ』って頼まれちゃって」 「ご、ごめんなさい!」 「全然良いですよ」 優しいんだな・・・ 「どうせ俺も高校一緒だし」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加