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あのあと政弥にクラスメイトの紹介をしてもらい、彩綾は安堵感からか息を吐きながら席に座った。
「あの、生駒さん」
座ったのもつかの間、呼びかけられて振り向くと、そこには徳川遥希がいた。
「あ、徳川くん?」
「遥希でいいです。 徳川っていうと、なんか…重い気がして」
「ああ…確かにね。なんか、偉い人って感じする」
そう言うと、遥希は微笑んだ。
まるで、そこに花が咲いたかのように。
この人とは、上手くやっていけるかもしれない。
そう彩綾が感じたときだった。
「なんだよ遥希、もう転校生に手出してんのか」
「…信稀くん」
からかったような織田信稀の言葉に、遥希は困ったような、悲しいような表情を浮かべた。
ー私はまだ知らない。
この瞬間から、運命の歯車がゆっくりと回り出していたことを。
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