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1-xが自習をしている頃。
ようやく寧々は、図書室の前で彩綾と愛の2人を発見した。
「愛!」
「あれ、寧々ちゃん。どうしたの?」
走ってやってきた寧々は、息を切らしていた。
「どうしたって、愛が勝手に生駒さん連れ出しちゃうからでしょ!愛一人じゃ心配じゃない」
「どうしてそんな事になるのよ。別に寧々ちゃんに心配される事した覚えないもん!」
口を尖らせる愛に対して、寧々は説教をする姿勢になった。
「忘れたの!?去年の修学旅行。あなた新幹線の中で迷子になったじゃない!」
新幹線の中でどうやったら迷子になれるんだ、と彩綾が思ってるうちにも説教は続く。
「だって、あれはあまりにも一方通行すぎて」
「一方通行だったら普通迷子になんかならないでしょ!しかも貸切状態でよ?」
「方向音痴なんだよ、あたし」
「そうね、愛は方向音痴すぎるから一人で生駒さん案内するのが不安だったの。まだ理由は言い尽くせないほどあるけど……愛!」
「はい!」
先ほどの説教より、一トーンあげた寧々に愛はすくみあがった。
「なんで生駒さんに荷物持たせたままなわけ?」
愛から学校案内を受けていた彩綾は、ずっと肩に学校指定のスクールバッグをさげていた。
「あ、しまった!…ごめん、ついついテンション上がっちゃって」
「愛。生駒さんに謝りなさい」
「はい。彩綾ちゃん、ずっと気づけてなくてごめんなさい!」
そう言って愛は直角90度に頭を下げた。
直後、彩綾の肩からスクールバッグが抜き取られ、寧々の肩にさがっていた。
「え、あの、え!?」
突然行われた二つの行動に頭がついていかず、あたふたしている彩綾に寧々が高らかに宣言する。
「愛、頭上げてよし!」
愛が頭を上げた衝動で、ぶうんと風が一瞬彩綾に当たる。
「あの、私別に謝ってもらわなくても…」
「いいの、私たちの気はこれで済んだから。今のは私たちの気が済んだ儀式だと思って」
「はあ…」
うまい具合に丸め込まれた彩綾は、次の瞬間に美しいお辞儀を受けた。
「私、1-xの学級委員をしております、高台寧々と申します」
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