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三人が1-xの教室に着いた時には、もう授業は終わっていたのか、騒然とした空気だった。
「あ、じゃあ、あたしそれ彩綾のロッカーにしまっとくねー」
愛はそれ、と指差した学校指定のスクールバッグを寧々から奪い取ると、教室の隅の方に駆けて行った。
「では、生駒さんにクラスの紹介をしなければ。……ハル、シュウがどこへ行ったか知ってる?」
寧々に呼び止められた、ハルと呼ばれた少年は立ち止まり首をかしげた。
「菊乃ちゃんのところじゃない?じゃなきゃ保健室で市先生に甘えてるか」
すると、寧々は苦笑混じりのため息をついた。
「いつものことね。……ああ、これは徳川遥希。徳川家の血を引いてるの」
「初めまして、生駒彩綾です」
「ふうん……僕は徳川遥希。よろしくね」
遥希から手を差し出され、その手を握ろうとした瞬間。
「彩綾!紹介するね、あたしのだいっすきな人で伊達政弥!」
愛に手を引っ張られるようにして、右目に眼帯をつけた少年がこちらにやってきた。
「すいません、うちの愛が迷惑かけて…伊達政弥です」
愛の紹介の仕方には慣れているのか、ぺこりと政弥は頭を下げた。
「ついでに、愛の婚約者兼彼氏です。愛が迷惑かけていくかもしれないけど、なんとかするから。これからよろしくね」
愛に聞かれたくなかったのか、政弥は小声で彩綾に囁いた。
「あー!!寧々、帰ってたんだ!」
耳元で囁かれて、少しだけ顔を赤くした彩綾の耳に今度は呑気な声が届いた。
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