うだるような夏の

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うだるような夏の暑さに、僕は癒しに出会った。 「電車、来ないですね」 待合室の片隅で涼しげに読書をする彼女が、どんな声で話すのか気になって、思わず声を掛けていた。 高く甘い声だろうか。 それとも凛として透き通った声だろうか。 「ああ。随分と待たされておるな」 「え…」 彼女の声は思いの外低かった。 低いどころか、まるで老婆のように嗄れいる。 僕は驚いて一歩退いた。 「お、おほん…。事故でもあったんでしょうか。心配ですね」 咳払いし再び言葉を発した彼女は、甲高いながらも上品な口調で僕好みの落ち着いた声をしていた。 聞き間違え? いや、そうではなさそうだ。 大きくむき出した丸い目を見つめると、顔をそらされた。 「今、そのカエル喋っただろ!?」 うだるような夏の暑さに、僕は幻に出会った。
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