第1章

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「なに読んでるの?」 「…………」 「ねえってば」 「……言わないと駄目かしら?」 「別に無理にとは言わないけど」 「恥ずかしいから言いたくないの」 「余計に気になった」 「『意中の人を射止める恋の化学式』。要はハウツー本だけど、題名がね」 「え、ちょっと待って。Aって好きな人がいるの?それって、バスケ部エースのC?」 「違う」 「じゃあ、学力テストで学年一位だったD?」 「いいえ」 「だったら、えーと……」 「私が好きなのは、頼りないけど、優しいBよ」 「え?……ごめん、蝉のせいで聞こえなかったんだけど、なんて?」 「ふう。現実は難しいわね。なんでもない。バスが来たからもう行くわ」 「うん、また明日ね」 「ええ」 「……本当は聞こえてたけどさ……」 「僕だってずっとAが好きだったんだ。頼りないかもしれないけど、告白くらい、僕から。いつか、絶対に」
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