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「なに読んでるの?」
「…………」
「ねえってば」
「……言わないと駄目かしら?」
「別に無理にとは言わないけど」
「恥ずかしいから言いたくないの」
「余計に気になった」
「『意中の人を射止める恋の化学式』。要はハウツー本だけど、題名がね」
「え、ちょっと待って。Aって好きな人がいるの?それって、バスケ部エースのC?」
「違う」
「じゃあ、学力テストで学年一位だったD?」
「いいえ」
「だったら、えーと……」
「私が好きなのは、頼りないけど、優しいBよ」
「え?……ごめん、蝉のせいで聞こえなかったんだけど、なんて?」
「ふう。現実は難しいわね。なんでもない。バスが来たからもう行くわ」
「うん、また明日ね」
「ええ」
「……本当は聞こえてたけどさ……」
「僕だってずっとAが好きだったんだ。頼りないかもしれないけど、告白くらい、僕から。いつか、絶対に」
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