温泉編

44/46
49人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
男は皆人の、ちょっとその辺では見ない容姿に目線を移し、少し考え、 「安心しろ、俺にその気はない」 と言った。 それでも、 「でも、よく見ると……」 男は、皆人のはだけた浴衣の胸元を見、和人を背負っているために胸元で縛ったようになっているロープを見た。 「悪くないかもしれん」 やーめーてーくーれー! 皆人、心の叫び。 確かに自分の武器には『色気』があると考えたが、こんな自分が一歩も動けない状態で発揮したくない。 気持ち悪い。 和人に見られるわけにはいかないから、声を殺したまま、変態に好きにされる自分の図を想像して、皆人は真剣に吐きそうになった。 皆人、絶対絶命のピンチ! 子連れ狼、貞操の危機。 イケマセン、子どもに聞こえます。 自分でもよくわからないフレーズが頭の中をぐるぐる回る。 とにかく、皆人は追い詰められてしまった。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!