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そんなふたりが滑り降りてくる、イリュージョンコースを見渡せるビーチテラスに、
乃亜と美百合はいた。
斜面を颯爽と滑る皆人と龍一を、ふたりの女性は、二階のテラス席から手を振って出迎える。
ロッジの近くまで滑り降りて来た龍一に、美百合はテラスから身を乗り出して、
「すごい龍一! これでボードが初めてだなんて、とても思えない!」
声をあげた。
乃亜もさかんな拍手をして、美百合の言葉を認める。
皆人は、そんな乃亜が、ただひたすらに気に入らない。
「なんだよ。誰も俺を見てねーのかよ。俺のが兄貴よりも断然うまいもんねー」
実は自分だけ、スノーボードの特訓をこっそりしていたのだが、
もちろん、そんな姑息な手段を知っているから、乃亜は龍一だけを褒めたのだ。
しかし抜け駆けを企んだり、ぷくっと拗ねて、その感情を隠そうともしない皆人は、とても30歳に近い男性とは思えない。
まあ、それが皆人である。
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