第1章

4/10
前へ
/10ページ
次へ
 戦争のない世界ってのは絵空事でしかないのだろうか。抑止力ってのはないとだめなのだろうか。性善説を信じる人が日本には多いのかもしれない。だから平和憲法を信じるのかもしれない。憲法ではミサイルから守れない。それでもやはり戦争をしない武器を持たない、こちらから殴りかからないという考えは尊いと思う。他国の犠牲に成り立つ平和だという人もいる。でも他国も皆平和憲法にしたら抑止力はいらない。もちろん核なんていらない。  人は弱い。そして疑う。だから武器を捨てられない。相手と同じだけのものを用意しておきたい。疑いが臨界を超えると先に殴りかかる。それが批判があれども標準的な考え方なのかもしれない。先制攻撃は凄く効果的だ。それを日本人はよく知っている。よく知っているからこそ先に手を出すことを禁止してるのかもしれない。禁止させられたのかもしれない。でもそれでいい。命を奪うことを先制するのは狂っている。 「『被爆のマリア』って知ってる?」去年の夏に読んだ本だ。そして被爆のマリア像は存在する。僕はそれが見たい。それを見たら戦争が少しは感じれるだろうか。戦争を感じれるものが身近にない。もちろん核も。だからこそ感じたい。 「被爆のマリア像は実在するんだ。ローマ法王も対面している。バチカンや海外へ行ったこともある。それを本で知った。原爆について考えるきっかけになったよ」 「そっか」キリコは興味なさそうに言う。だけど。 「貸して。夏に読むべきよね。暑い日に汗かいて読む」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加