第1章

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 その日私は、骨董品屋の店内をぶらついていた。その日は特に目当ての品物はなかったが骨董品が好きでよく訪れるのだ。その日訪れた骨董品屋Aは初めて訪れた店だった。店内をぶらついていると、金メッキを施された年代物のシャワーヘッドが目に留まった。別にシャワーヘッドを購入したいと思わなかったので、そのままシャワーヘッドが置かれてある棚を通り過ぎようとした時のことだった。目の奥が金色にチリチリと光り、目に痛みが走った。「金色・・・・・・」何かの暗合かな?と、シャワーヘッドが置かれている棚に戻りシャワーヘッドを手に持ってみた。年代物ではあるものの安っぽい金メッキである。しかし私の心は異様にその金メッキの輝きに魅了された。そしてそのシャワーヘッドに心が取り憑かれてしまい、シャワーヘッドを購入してしまった。それから家に帰り浴室でシャワーヘッドを取り替えようとしたものの、サイズが合わない。部屋に戻るとパソコンを開き、仕方なくネットでアダプターを取り寄せた。五日後の夜。宅配で届いたアダプターを取り替えると問題なくシャワーヘッドを装着することができた。いったい私はこのシャワーヘッドになぜこんなにも魅かれたんだろう・・・・。そう思いながら弱めの勢いでシャワーを頭から浴びた。初めは何も起こらなかった。普通のシャワーである。しかしシャワーから出てくる水滴を見ていると私はとても不思議な現象に遭遇した。シャワーから出てくる水滴がスローモーションを見ているかのような速さで見えるのだ。そして不思議なことはそれだけではなかった。シャワーから出てくる水滴の一つ一つに「誰かの顔」が映っているのだ。私はマボロシでも見ているのかと、目を擦ってみたがやっぱり水滴の一つ一つに「顔」が映っている。しかもその「顔」になんとなく見覚えがあるような気がした。私はよく目を見開いてその「顔」が誰なのかを探り当てようとした。そして驚いた。道理で見覚えがあると思った。なぜなら水滴に映っていた「顔」は私の顔だったのだ。しかも驚きはそれでは終わらなかった。その水滴には「ストーリー」があったのだ。
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