第1章

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水滴に映る情景がシャワーの流れと共に刻一刻変化してゆく。いってみれば水滴でできた非常に粗雑なアニメーションのようなものだ。私は流れてゆく水滴を凝視してその「ストーリー」を追い続けた。そして約五分間、シャワーを頭から浴びっ放しのまま「ストーリー」を追い続けた後、浴室に据え付けられている鏡に映る真っ青な自分の顔と向き合った。ストーリーは簡単にまとめると以下のようなものであった。「友人のMに私が刺し殺される」そしてその理由はMから借りていた私の借金が原因だった。かれこれ二百万円。借りた理由は私のギャンブル狂い。そして私はMから借りた金をなあなあにしたままもう二年も返済していない。確定はできないものの先ほどシャワーの水滴を通して見た「ストーリー」は未来予知なのだと私は思った。状況次第ではまだMに殺されずに済むかもしれない。私はなあなあにしていた借金の返済をすることに決めた。
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