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犯人はこの顔文字で私達にどうしても伝えたい事があったようだ――
それは、もはや自分では制御出来なくなった自分を止めて欲しいと言うSOSと、そうなってしまった自分自身に対する後悔、憎悪、憤怒そして悲哀とが混ざり合い、被害者の恐怖や混乱を隠してしまっているように感じた。
校舎に激しく降り続く雨は殺人者“泣き顔の天使”の涙か、窓を揺らす風は天使の叫びか、時折落ちる雷は天使の怒りなのか――
私達、私立鳩朔高校の生徒は今、泣き顔の天使の心の闇に入り込んでしまったかのように、暗闇の校舎の中にいる。それも深く。
頼りになるのは科学室から持参したアルコールランプだけだ。懐中電灯は一つしか持てないし電池の変えがいるのでここから職員室まで取りにいかなければならない。はぐれたら危険だ。だから五つのアルコールランプに火を点けた。
その妖しく燃え立つ炎とぼんやりと映る私達の影でさえも一層不気味に感じられる。
軒下鈴女さん、鷲尾優花さん、鷹山美沙さん、丹波千鶴さん、そして私、鶯谷小豆(うぐいすこまめ)の鳩朔チアリーディング部五名は泣き顔の天使がメッセージとして見せつけた顔文字。
“(ToT)”
――の前に集まっている。各々が肩を寄せ合い、体を小刻みに震わせている。
皆、極度の恐怖と混乱、不安に脳が支配されてどうしていいか判らないと言った所だろう。どうしたらいいのか。やる事は一つしかない――
「犯人はこの中にいる!」
そう。泣き顔の天使が誰かを突き止めること。出来るだけ早く。
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