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以前のバディ 濡棲 宝大(ヌスミ ホウダイ)は、仕事中に盗みを働き、クビになった。この仕事は信用第一。手癖の悪い奴には勤められない。
それが、例えソーセージ1本でも、だ。
――――――――――――――
掃除の範囲は店舗全体。
先ずはアラウンと俺で客席の机と椅子、それとガラス窓を丁寧に拭き上げる。
次に俺が客席の椅子を机に上げ、床を掃く。
その間にアラウンがバケツに薬剤入りの水を貯め、それで掃き終わった所にモップ掛けを行う。
床を掃き終わった俺はポリッシャーを巧みに操り、床を磨き上げる。
この、流れる阿吽の呼吸が大事なんだ。
淀み無く進む仕事が、気持ち良いんだ。
……客席は。
―――問題は厨房にある。
いつだってそうさ。
これだから嫌なんだ。
俺とアラウンが厨房に入る。
店舗に入った時に、全ての電気を点灯させている。つまり、厨房も暗闇から解放されてから既に3時間は経過しているのだ。
アラウンは頻繁に厨房からバックヤードを出入りしている。水を汲むためだ。
厨房の調理台は綺麗に拭かれている。
その上には、綺麗に洗われた食器類。
そして、その食器の上には。
カサカサ……
カサカサ……
奴らが居る。
カサカサ……
カサカサ……
綺麗に洗われた筈の食器の上を這いずり回る
ゴキブリ。
カサカサ
カサカサ
ゴキブリ
ゴキブリ!
ゴキブリ!!!
これだから嫌なんだ!
奴らは『今は俺達の時間だ。人間風情が邪魔するな!』と言わんばかりに厨房を這いずり回る!
ゴキブリだけじゃ無いんだよ!
世界的に有名で人気者になったのも数匹いるが、大概は嫌われているネズミも時折顔を出す!
食器の上は奴らのアトラクション!
登って降りて、
飛んで跳ねての大運動会!
俺らが居てもこの有り様であるのだから、俺らが居ない時の厨房は、それはそれは我が物顔なのだろう。奴ら。
そして、この運動会後の食器類は、
洗われる事無く料理が盛られ
それを美味しそうに食べるお客さん。
古いビルに入っている飲食店で有れば有る程。
その水回り、厨房スペースで行われる大運動会の参加人数……いや、参加匹数は多い様だ。
……
俺は、外食をしなくなった。
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