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あのね……
龍一が寝室のドアを開けた時、
美百合はちょうど、自分に向けた携帯カメラのシャッターを押したところだった。
「……何してる?」
龍一の声は、仇敵でも見つけたように、低くなる。
龍一の本性を知っている相手なら、一目散に逃げ出すか、反射で撃鉄を起こしたはずだ。
けれど、
「これ、けっけさんに貰ったの。かわいいから乃亜ちゃんにも着て見せようと思って」
美百合の声は能天気なまでに明るい上に、龍一が発する不穏な空気にまったく気づくことなく、連続して自分にフラッシュを光らせている。
美百合の格好は、パーカー付きの半緑のキャラクターの着ぐるみに、腕に抱いたウサゴンぬいぐるみ。
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