おやすみなさい

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右腕で美百合の頭を抱くようにして、ワシャワシャと髪を拭いてやれば、 「もう龍一ってば、子ども扱いしないでよ」 何が気にいらないのか、美百合はぷっくりと膨れあがる。 「それより何読んでたの? えっちな本?」 龍一が立つと同時に閉じてしまった本を指差した。 気になるのなら開いてみればいいのに、妙な所で律儀な美百合に、龍一はちょっと笑う。 「お前には、少し難しいぞ」 警告する龍一に、美百合は、 「やっぱり子ども扱いする」 膨れたままで、龍一が手渡した本を広げた。 「……」 分厚い本を膝の上に置いたまま、体を硬直させる美百合に、龍一は耐えきれなくなり、クツクツと笑う。 さっきまで膨れていた頬を見る間にしぼませて、美百合は口を尖らせて龍一を覗った。 「……これ何語の本?」 「ロシア語。俺の母親の国の言葉だよ」 そして龍一は、その『雪が降る前に』とロシア語で書かれた詩集を、ゆったりとした声音で美百合に読んでやった。
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