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窓をふさぐ龍一の背中越しに、美百合はのどかにさえずる3羽のスズメを眺めた。
チュン、チュンチュン
「――」
呆れて声も出ない。
きき耳ずきんじゃあるまいし、スズメが誰に告げ口するというのか。
「これ、パジャマだよ」
美百合は返す言葉も見つけられず、袖を広げて服を見せ、ただ事実を述べた。
けれど龍一は、
「胸元が開きすぎ、足も出しすぎ。それで寝たら、お前は間違いなく風邪をひく」
「……」
美百合の心の中は、
『何着てたって、結局龍一が脱がすじゃない』
と反論でいっぱいだが、口には出さない。
その代わり、今着替えろと言ったクセに、
美百合のパジャマの前ボタンを、きっちりと上まで閉じている龍一を、じっとりとした眼差しで見上げた。
龍一は美百合の視線から逃げるように踵を返すと、窓辺に歩みよりカーテンに手をかけた。
真っ昼間から、遮光カーテンで室内を締め切ってしまう気らしい。
これまでの経験上、龍一がカーテンを閉めたが最後、何事もなく部屋から出られたためしがない。
そっちの方がよっぽど淫らだと、美百合は冷静に思う。
しかし龍一は、カーテンに手をかけたまま、ふと動きを止めた。
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