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美百合の目は固く閉じられ、ただ龍一を感じている。
しかし龍一は、その眼光をするどく光らせ、窓の外を見やった。
美百合を壁に押し付けたまま、窓から外に、龍一の右腕が伸びる。
その手のひらに握られているのは、
――愛用のベレッタ。
そして銃声。
驚いたスズメらは、一斉に羽ばたいて逃げていく。
龍一の腕の中で、美百合の体がピクリと弾んだ。
しかし龍一は美百合を放さない。
左腕に抱いたまま、舌で容赦なく美百合を責め続ける。
「……んぅ」
戸外は、生き物が身を潜めた一瞬の静寂後、
またゆるゆると、のどかな風景が戻り始めていた。
田舎の景色とは、そんなものだ。
穏やかだが、確実に自己治癒していく。
そんな平和な気配が戻ってくると、龍一はようやく美百合の唇を解放した。
美百合は甘くとろけた瞳で龍一を見上げ、
「……あ……、あのね……」
と舌ったらずに、言葉をつぐむ。
「本当は、龍一だけに『可愛い』って言ってもらいたかったんだ」
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