第1章

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近所の犬の鳴き声。 校舎の向こう側に見える山の緑と空の青。 部員の声が響くグランド。 ボールの音が聞こえる体育館。 楽器の音色が響く校舎。 広い黒板。 長い廊下。 並ぶ教室。 薄汚れた机。 私が過ごした青春が、この学校にある。 卒業してから、もう6年が経った今、改めて校舎を歩くと少しくすぐったい。 脳裏に蘇る思い出の数々に思わず口角が緩んだり、思わず声を出して笑いそうになったり、恥ずかしくて走りたくなったり、泣きたくなったり…。腰掛けた机は、高校生の頃から成長していない私を物語るかのように、やけにしっくりきて笑いそうになった。 卒業して数年経った時、大学の友人が口を揃えて「高校生に戻りたい」と言っていたのを思い出した。 もし高校生に戻れたら…何をするのだろう? 授業をもっと真面目に受ける… テスト勉強を頑張って好成績で卒業… 高校生活最後の部活の試合も勝つ… 体育祭のリレーであと1人抜かす… でも、戻っても絶対に、机のラクガキは必ずする。 当時の自分を褒めたいことは、先生に怒られてもめげずにラクガキを続けたこと。 そのせいで授業はおざなりになったこともあったが、それと引き換えに、素敵な思い出を得ることが出来た。 「あずさ」 今、私の名前を呼ぶこの人と出会うことが出来た。
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