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それは次第に鼓動を早めていき、血流を求め酸素を求め、龍一の手の中で暴れまわる。
美百合が苦しさに耐え兼ねて、龍一の手首に爪をたてた。
だが、龍一は力を緩めない。
美百合の苦しみに喘ぐ顔が色っぽい。
うごめく舌が、魅惑的に龍一を誘っているようだ。
龍一の手の中で、美百合の小さな生命を握っている現実が、たまらなく愛しい。
トクントクンと手の中の血管は軽快なダンスを踊る。
美百合の背中は限界まで反って、苦しみに顔を歪ませ酸素を求めて、身体と中心を大きくくねらせる。
「……くっ」
その顔が、絶頂を迎えた表情に見えるのは何故だろう。
もっともっとと、龍一を求めているように見えるのは何故だろう。
いや、求めているのは、もしかしたら、
――自分か。
美百合の血を求めて、美百合の生命を欲して、手の中に花を握る。
握り潰そうとしている。
龍一はひときわ大きく動いて、美百合を貫いた。
息を止められ、悲鳴にならない声を形作って、美百合の唇が動く。
その身体が、ブルルッと震えた。
龍一は、恍惚の中で目を細める。
――狂気だ。
美百合の身体は、龍一を狂わせる。
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