5人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺のお嫁さんになって下さい!」
学ラン姿で直立している男の子を、同じ学校の制服を着ている女の子がちらりと見る。
「10年後、気持ちが変わらなかったらその時にまた言ってほしい」
視線を本に戻した女の子を見て、男の子は呟いた。
「……やっぱり、そうだったんだ」
「えっ?」
女の子が顔を上げる。
「10年前も君は、大きくなったときまた言ってね。って言ったんだ。その時も本を読んでた。絵本だったけど」
女の子ははっとした表情になり、
「あなた、もしかしてあのときの……」
“あのとき”と変わっていない目元を見つめた。
男の子が肯定の意味で微笑むと、女の子は懐かしむように目を細める。
「あれから、もう10年も経つのね」
「うん。10年後……」
男の子は照れくさそうに笑って、こめかみの辺りを掻き、言った。
「きっとまた、同じ言葉を君に伝えてしまうと思うよ」
最初のコメントを投稿しよう!