初恋

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「俺のお嫁さんになって下さい!」  学ラン姿で直立している男の子を、同じ学校の制服を着ている女の子がちらりと見る。 「10年後、気持ちが変わらなかったらその時にまた言ってほしい」  視線を本に戻した女の子を見て、男の子は呟いた。 「……やっぱり、そうだったんだ」 「えっ?」  女の子が顔を上げる。 「10年前も君は、大きくなったときまた言ってね。って言ったんだ。その時も本を読んでた。絵本だったけど」  女の子ははっとした表情になり、 「あなた、もしかしてあのときの……」  “あのとき”と変わっていない目元を見つめた。  男の子が肯定の意味で微笑むと、女の子は懐かしむように目を細める。 「あれから、もう10年も経つのね」 「うん。10年後……」  男の子は照れくさそうに笑って、こめかみの辺りを掻き、言った。 「きっとまた、同じ言葉を君に伝えてしまうと思うよ」
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