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脱力感を引きずったままやがて一夜が明ける。
たいして眠れもしない。熟睡できるわけもない。
如何にも意味あり気な鉛色の霧が夜明けを遠ざけた。
眠りが浅いのはここ数日の猛暑と
悪い夢でも見たのだと信じたい。
起きてキッチンの前に立つまではそのつもりだった。
「な、何だこれは!」
周りのフローリングの床が・・・
辺り一面水浸しになっているのだ。
ただの悪夢ではすまなかった。
青ざめた形相で茫然と立ちつくした。
そしてまたしても薄暗い気配が忍び寄るのを感じる。
・・・・!!
ああ・・みてはいけない!みては・・
まるで暗示をかけるように自分に呟いた。
意味ありにぽたぽたと滴る音・・・。
耳元で不自然に響いていた。
水道の蛇口からおもむろに視線を外した。
昨夜の悪夢の戦慄が甦ったのは言うまでもない。
数秒の沈黙のあと体に微動を走らせながら
居ても立ってもいられず部屋から飛び出した。
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