第1章

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B「何してんだ。早く帰れ。」 ゆっくりと彼女は顔を上げた。 A「えへへ、また見つかったか。先生今帰り?」 イタズラっこみたいにこっちをみて笑う。 B「毎日、この駅で何してんだよ。遠回りだろ?」 彼女はまた本に目を落とすと、そのまま呟くように言った。 A「んー。本読んでリセットしたら、帰るよ。先生もお疲れ!早く帰ってゆっくりしなって。」 学校にいるときはメガネなんてしておらず、こんな顔も見せない。ただ少し彼女は冷めた目をしていた。 俺は隣に座ると、目も合わせず聞いた。 B「駅まで送るか?なんかまたあったのか。家。」 頁をめくる彼女の手が止まった。 A「………………。」 B「ほら。行くぞ。」 俺は立ち上がって彼女を促す。 彼女の担任になって、週に2、3回こんなことが続いている。 後ろを付いてくる音を確認して。 今来た改札を、微妙な距離で二人ホームへ歩いた。
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