#03 * 歌子

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いくら性能のいい耳栓をつけても、音によって向き不向きがあって、 必ずしもあらゆる音を遮断してくれるわけではなかった。 だから普段は誰もいない静かな図書室で過ごし、 放課後になって図書委員が来る前に、 生徒の寄り付かないトイレの個室に潜んで、 騒々しさをやり過ごしてから下校している。 誰もいないという点のみを優先していたから、 トイレは男女を気にしなかった。 そんな生活を1年以上続けた。 給食やその他プリント類は、担任の先生が図書室まで持ってきてくれて、 生徒の誰にも気付かれる事なく、毎日登校しては下校した。 自分が何のために学校にかよっているのか、 そんなことは考えもせずに、学生としての義務をこなし、 先生方から見放されて、登校できなくならないように、 成績優秀を保つためひたすら勉強した。 校庭ではしゃぐ男子たちや、教室で雑談する女子たち。 みんなと同じ、友達がいて、部活に励んで、学校が楽しくて…… 私も、そんな生活を送りたい。
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