#03 * 歌子

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「えっ……と、その……ごめん。」 彼はバツが悪そうに謝った。 内気な性格のせいか、生まれつきか…… 比較的に小さな声で話す男の子だった。 低くも高くもない独特な声質が、 私の耳栓で上手い具合にカットされている。 それが、私にはちょうど良かった。 そういえば、ここは男子トイレで……個室は二つ……だった? 一つしかなかったような気もしてくる。 もしかして、隣は清掃用具入れ、とか……? 思考を巡らせて、ふと思い立ち、分厚いメモ帳を取り出した。 走り書きして、彼に見えるようにかかげてみる。 ”トイレ、使いたいの?” 「僕は今、隣の個室から君を見ているんだよ。  つまりそこは空いていて、使える状態ってことだ。」 隣が個室かどうかについては、自身なかったのに…… その説明をすると長くなるので簡単に返す。 ”そっか、そうだね” 「うん……そうだよ」 ”ところで、洗濯は終わったの?” 「……洗濯って?」 ”さっき何か洗ってなかった?” 「ハンカチだよ。ハンカチ。」
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