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図書館の本棚
本が好きで、よく、地域の図書館を利用している。
あまり広い施設ではないので、画集のような大きいサイズの本は、壁を囲むように設置された本棚に置かれており、新書や文庫、ハードカバーなどは、外枠と数枚の板を組んだだけの背の部分がない本棚に、正面と裏側それぞれからタイトルが見える形の二層で置かれていた。
そんな本棚を物色していた時のことだ。
一冊の本に目が行き、取ろうとすると、何かがその動きを妨げた。
見れば、棚の裏側から誰かの手が同じ本にかかっている。
咄嗟に手を話すと、反対側にいた人の手もすぐ引っ込んだ。
本の並び状、逆側からは背表紙が見えないので、普通はそちらから奥の本を取ることはない。だけど移動が面倒な時などは、たまに同じことをしてしまう場合がある。
似たようなものぐさ読書家がいるんだなと、この時は単純にそう思った。
そして後日。
訪れた図書館で俺は本を物色していた。その際に、また、同じ本を見知らぬ誰かと同時に取り合うという状況に陥った。
しかし、今俺が手に取ろうとしていたのは某有名画家の画集で、置かれている棚は壁際。逆の位置から誰かが本を手に取るなど、ありえない状況なのだが…。
本は読みたいし、遠くの図書館に行くのは面倒。好きな本を好きなだけ買う財力もないから、今も俺はこの図書館に通っている。
ただあれ以来、本を棚から取る際は、『この本、今から俺が取りますから』という一言を添えて、本を引き抜く前に軽く揺する癖がついた。
これで最初から取り合うのを諦め、指をかけることなく譲ってれるようになるといい。
図書館の本棚…完
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