面影幻想

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「毎日、ありがと」 「馬鹿だよな」 「それを言ったら私もだよ」 田舎の無人駅。 白々しい禁煙を促す貼り紙。 そんなルール、守られなくって。 一学期、本の世界に入り込むのが特技ですと自己紹介した彼女は、足の悪かった彼女は、逃げそびれて木造の駅と一緒に焼け落ちた。 「四十九日、毎日謝りに来てくれたね」 少し上目遣いに笑った彼女は、夏の陽射しあふれる駅と共にかき消える。 「……ごめんなさい」 空は青く高く、声を運んだ風はもう冷たい。
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