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「あなた、帰っても春雪くんの話しかしなかったから、
ママも忘れてたわ。そうそう、次男坊くんよ。」
そうか……あの少年が、雪将くんなのか……
当時の顔つきは思い出せないけれど、
雰囲気に面影が残っている。
物静かで、恥ずかしがり屋で、優しい小柄な男の子。
<ママ……>
「ん?」
<でんわ……しなくて だいじょうぶ ありがとう>
そうか……私たちは、初めましてなんかじゃなかったんだ。
遠い昔に、思い出が残ってる。
(雪将くんは、覚えているのかな……)
顔色を伺うように私の顔を覗き込んで、
目が合っては背けていた、あの少年。
いつもお兄ちゃんの後ろに隠れて、恥ずかしそうにしていた。
もっと仲良くなりたかったのに、
お互い何かに阻まれて、歩み寄れなかった、あの頃。
彼は、少し変わったのかもしれない。
あの頃よりも男の子らしく、話を振ってくれたり、
リードしてくれたり、気にかけてくれたり……
まるであの頃できなかったことを克服するように。
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