#04 * 歌子

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「あなた、帰っても春雪くんの話しかしなかったから、  ママも忘れてたわ。そうそう、次男坊くんよ。」 そうか……あの少年が、雪将くんなのか…… 当時の顔つきは思い出せないけれど、 雰囲気に面影が残っている。 物静かで、恥ずかしがり屋で、優しい小柄な男の子。 <ママ……> 「ん?」 <でんわ……しなくて だいじょうぶ ありがとう> そうか……私たちは、初めましてなんかじゃなかったんだ。 遠い昔に、思い出が残ってる。 (雪将くんは、覚えているのかな……) 顔色を伺うように私の顔を覗き込んで、 目が合っては背けていた、あの少年。 いつもお兄ちゃんの後ろに隠れて、恥ずかしそうにしていた。 もっと仲良くなりたかったのに、 お互い何かに阻まれて、歩み寄れなかった、あの頃。 彼は、少し変わったのかもしれない。 あの頃よりも男の子らしく、話を振ってくれたり、 リードしてくれたり、気にかけてくれたり…… まるであの頃できなかったことを克服するように。
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