#04 * 歌子

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6月終わりの校庭から吹き込む、少し湿った風。 今日は隣の席に、雪将くんが座っている。 雪将くんはアルケミスト、私は昨日の続きを読んでいる。 夏を前に日差しは強まり、首元にじわりと汗がにじむ。 音を立てないようにページをめくった瞬間、 急に三つ編みがほどけた。 見ると雪将くんがいたずらしたようだ。 <ちょっと なにするの> 「そうした方が、可愛いから。」 (何を言ってるの、この人は……) 顔が熱くなるのを感じて、慌てて俯いた。 もう……びっくりした。あぁ……もう。 私は彼に向き直ると、思い切り睨みつけた。 何を思ったのか、彼は手を伸ばして私の頬に触れてくる。 (こっちは怒ってるのに、本当に何してるの、この人……) そんなことを思っている矢先、彼の顔が少しずつ近づいてきた。 (なに……ちょっと、待って、待って……) 唇を塞がれて、頭が真っ白になった。
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