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「きみたち、うるさいよ……あっち行け!
うたちゃんに、こんなことしちゃいけないんだ!
うたちゃんに、いじわるしちゃいけないんだよ!
ぼくが……ぼくが許さないから……
うたちゃん…お願いだから……泣かないで……」
初めて、彼が心から怒っているのを見た。
自分がいじわるされたからではなく、
どうしていいか分からずに泣きそうな私を見て、
彼は怒った。
結局その後、彼も私も号泣してしまい、暫くして先生が来て、
周りの子たちは怒られて、私たちはなだめられて、終わった。
それから卒業まで彼と話すこともなく、
そのまま卒業して、彼のことを忘れてしまっていた。
あの少年から気持ちを聞くことはできなかったけど……
きっと……
< またすきになってくれたんだね い いよ >
苦しいほど抱きしめられて、感じる。
小柄だけど、骨ばっているなで肩。
私よりも大きな手、はねた短い襟足。
夏を前にーー
少し大きくなったあの少年と、
今度は違う形で出会い、
あの頃に叶わなかったことが、
これからは叶っていくのだと……
照りつける太陽の日差しを背に浴びながら、
思った。
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