#04 * 歌子

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胸の鼓動が耳の奥まで響いている。 息が苦しくて、肩が大きく上下する。 拳は強く握りすぎて白ばみ、長くない爪が手のひらに食い込んだ。 教室の前…… ここであっているはずだけど…… 少し背伸びをして覗き込んだ。あからさまに席が二つ空いている。 一つは私の席。もう一つは…… プリントが裏返しで置いてあって、綺麗な大人の文字で、 見慣れた苗字が大きく書かれた付箋が、これ見よがしに貼ってある。 (お休み、なのかな……) へたへたと廊下に座り込む。 私は一体、何をそんない怖がっていたの……? とぼとぼと図書室に戻り、窓の外を眺めた。 夏風邪を引くにはまだ少し早い季節。 梅雨明けからの変化に、体調を崩したのかもしれない…… そこまで考えてハッとした。 そうか、私…… お見舞いに行く事もできないんだ……
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