#04 * 歌子

7/16
前へ
/16ページ
次へ
雪将くんが図書室にくるようになってから、 私たちは毎日一緒に下校している。 彼はいつも私を家まで送ってから帰るのが習慣だったから、 私は雪将くんの家を知らない。 普通ならここで連絡網を思い浮かべるのだろうけど、 受話器を耳に当てて人と会話するなんて、 私には到底できない。 明日まで、待つしかないのか…… 私は自分が情けなくなった。 雪将くんは、私の事を知ろうとしてくれているのに、 私は彼に甘えてばかりで、歩み寄ることをしなかった。 もちろん耳のこともあって、人との間にハンデを感じたり、 コンプレックスがあったというのもある。 でも今思えば、自分から誰かと関わろうとか、 誰かのことをもっと知ろうと思ったことがなく、 その結果として、ずっと友達がいなかったのではないか…… このままではいけない。 雪将くんは、たった一人の大切な友達なのだから。 私も、変わらなくてはいけない。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加