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主人公ナギトはヘビースモーカー。
だから俺は彼女の前ではタバコをくわえてみるんだが。
「ここは禁煙ですよ? そんな真似したってナギト様にはなれないんですから」
「だっ誰もなりたくなんかねぇし!」
停留所で二人きり。
だけど彼女は視線を本に落としたまま、俺をみようとはしない。
――そのまま五分経過。
沈黙にたえられず俺は言う。
「あのさっ」
「なんですか?」
強い口調にも俺は動じない。
彼女の微かな頬の紅潮をみて、勝負に出る。
「さっきから一度もページをめくらないな。
俺のこと好きなんだろ?」
……彼女はやっと俺をみた。
でもすぐにうつむいて、小さな声で返事する。
盛りを迎えた蝉の声が、煩いくらい響く。
俺が、あの主人公ナギトに勝った瞬間。
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