第1章

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主人公ナギトはヘビースモーカー。 だから俺は彼女の前ではタバコをくわえてみるんだが。 「ここは禁煙ですよ? そんな真似したってナギト様にはなれないんですから」 「だっ誰もなりたくなんかねぇし!」 停留所で二人きり。 だけど彼女は視線を本に落としたまま、俺をみようとはしない。 ――そのまま五分経過。 沈黙にたえられず俺は言う。 「あのさっ」 「なんですか?」 強い口調にも俺は動じない。 彼女の微かな頬の紅潮をみて、勝負に出る。 「さっきから一度もページをめくらないな。 俺のこと好きなんだろ?」 ……彼女はやっと俺をみた。 でもすぐにうつむいて、小さな声で返事する。 盛りを迎えた蝉の声が、煩いくらい響く。 俺が、あの主人公ナギトに勝った瞬間。
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