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Starting Over
◆◆◆◆
まずは状況を整理しよう
・まず俺を刺した女が誰なのかは分からない
・此処が何処なのかは分からない、少なくとも今まで暮らしていた場所とは大きく違う
・他に人が住んでいるのかは分からない
・俺が何故全裸なのかも分からない
さて、むしろ整理したところで何が分かるんだこの状況。
トカゲが飛ぶ、リンゴが噛み付く、人はいない
「……ふむ」
割と真剣に詰んだんじゃないかな。もう考える事を投げ出してしまいたい、だがとりあえず幾つか検証をしなければならない
創作物の世界では、こういった出来事に見舞われた人物は大小の差はあれど異常な筋力や特別な力を持つ事になる。
確かめるべきだろう、場合によってはチート能力などという素晴らしい物を手に入れていることだってあるのだから。
まずは地面に本気とはいかないまでもそれなりの力で拳を叩きつける。
少し窪んだがこれは地面が純粋に柔らかいだけではないだろうか。むしろ手を怪我しなくて良かった。
・異常な力、無し
次に前方に手を翳してみたり、座禅を組んでみたり、念を込めながら集中してみる。
草が揺れた、ただ単に厨二系ポージングの最中に風が吹いただけである、股間が少し寒い。
・特殊な能力、無し
「……何が出来るんだ俺」
先程噛み付こうとしてきたリンゴは未だ俺の隣にある。
そのリンゴから憐れみの視線を向けられたような気がした。
酷く滑稽な格好も相まって非常に惨めな気持ちになる、ちょっと泣いていいだろうか。
それにしても翼の生えたトカゲ、まあ恐らくドラゴンなのだろうが、それがいるという事はやはりエルフやドワーフといったThe・ファンタジー的な生物も多種多様に生息しているんだろう。
以前の世界……と言って良いのかは悩みどころではあるが、普通にアルバイトをこなして過ごしていた数時間前までの頃は、そういったファンタジー系の話も幾らか読んでいた。
そのため設定などは色々と思いつくわけだが、まあ現実の状況を創作物と当て嵌めるのも妙な話か。
この何一つロクな情報が無い現状では、何をするにせよ一先ず人を探さなければならないのだが……
「全裸の男が急に来たら流石に警戒されるよなあ……」
先に適当な布切れでも見つかれば良いのだが
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