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「いやあ、重ね重ね厚かましい事を言ってしまい申し訳ありません」
「なあに、良いってことよ、こんな時期に旅人なんて見つけた時にゃ見間違いかと思っちまったがよう」
時計がないから正確には分からないが、あれから二~三時間程は歩いただろうか
そこで偶然にも恰幅の良い髭面の男性に見つかり、このログハウスのような家に案内してもらう事になった。
俺の事は身包みを剥がされた旅人だと思われているようなのでそのまま通す事にする。
まあ何にせよこれで衣食住が一気に解決したわけだ。
そして今は食事を囲いながら話をしている、スプーンで掬ってみるがこれはシチューだろうか、なかなか旨い。
「いんやそれにしたってあんた何処から旅して来たんだ?この時期は竜種の活動が活発になるから騎士団だって滅多に来ないってのに」
「そうだったんですか……そんな危険な時期にどうしてあなたは一人でこんな所に?」
髭面の目が少し細くなる、流石に話の逸らし方が露骨過ぎただろうか
「いや、まあそれは良いんだよ……まあジックリ味わえ、俺ぁ薪割って来るからよ、残すんじゃねえぞ」
言い淀んだことから察すると何か集団に居られないワケでもあるのだろうか
まあ食事と服と宿をくれるような相手だ、そこまで警戒する程の事でもないか。
そこまで考えたところで眠気に襲われ、机に突っ伏す。
俺は異常な環境に動揺していたのか、致命的なことを忘れていたのだ
俺に向けられる優しさなんて物はこの世の何処にも無いという事を。
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