急襲

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掌から自然と溢れていく水。 「皆!外へ逃げて!」 杏奈が拳を握り締め、そのまま前に突き出すと、瞬間、溜めていた水が破裂するかの様に膨れ上がり巨大な拳の形を作り出す。 巨大な拳の形をした水の塊は、銃口の先端部を殴りつけた。 体全体に響く重たい衝撃音。 窓から強引に押し込んできていた巨大な銃口は、壁を崩しながら弾き飛ばされた。 その隙に仁が玄関に向かって走り出し、それに俺と美沙が続く。 最後に、杏奈の足音が背後から聞こえてきた。 全力で玄関まで駆け抜け、そのまま慌ただしく外へ。 閉鎖的な空間から広がる視界。 二階から見下ろす、月明かりと頼りない街灯の明かりが照らしたアパートの敷地内。 こっち側には敵はいない。 仁は足の動きを止めることなく、そのまま地を蹴ると廊下の柵を飛び越えて一階に着地する。 美沙は扉を出ると、左に設置された階段の方へ。 『上から行くぞ』 俺は、光刀の言葉に黙って頷きながら足に力を入れた。
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