急襲

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「準備はいいか?」 再度確認。杏奈の話によると、ブラックアウトの世界へ行くためにはUSBケーブルを体の一部分に刺すことによって、細胞が分解されデータ化されていくらしい。 嘘くさいと疑うよりは、ケーブルを突き刺すという恐怖の方が大きい。 「怖いな……」 黒い器具の装着を終えた俺達は、それぞれUSBケーブルを手に握り締める。 これまで気付かなかったが、よく見ると先端の方が通常の物とは異なり、僅かだが刃物の様に鋭利になっていた。 「よく見ててね」 そう言うと、杏奈はケーブルを持った手を高く上げた。 もう片方の腕を少し曲げて、手から肘までの間の肉をケーブルの真下に合わせる。 そのまま杏奈は躊躇わずに、振りかざしたケーブルを勢いよく自分の腕に突き刺した。 「──っ!」 ケーブルは、杏奈の腕の皮膚と肉を破り赤く滲み始める。 その直後、突き刺した箇所から段々と透き通り始めた。 「大丈夫。あとは向こうに勝手に運んでくれるはずだから」 その様子を見て、今度は仁が自分の腕にケーブルを突き刺す。 「か、和也ー!出来ないよ!」 ケーブルを手に持つ美沙の顔は混乱を表しているのは明らかで、瞳には突然溢れたであろう涙が滲んでいた。
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