急襲

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全身に纏っている白煙が、再び刀身に集中する。 俺は爪先に力を入れて、敵に向かって突進した。 「うああぁあ゛あ」 踏みとどまっている敵の目前で飛び上がり、懐に潜り込む。 最大限まで硬質化させた光刀。 振り上げた刀は一気に重みが増す。 そのまま重みに身を任せ、俺は敵の胸部辺りを殴りつけるが如く、光刀で斬りつけた。 ──ガコンッと響き渡る衝撃音と、柄を握る掌から伝わる確かな手応え。 地面へ着地した俺は、少しよろめきながら敵を見定めた。 寸前のところで踏みとどまっていた敵の足は滑り、宙に浮きながらアパートへ倒れていく。 『よし。よくやった』 敵の胸部には僅かながら亀裂が入り、その鋼鉄の体に損傷を負ったことがわかった。 アパートの壁を崩し、建物を真っ二つにする様に激しい音を立てながら仰向けに倒れた敵。 このまま追撃した方がいいのか? 『いや。大丈夫だ』 踏み出そうとした一歩が光刀の言葉で止まる。 「仁、美沙」 鉄の巨人が倒れたことにより、出来た広い空間。 その穴が開いた左右の部屋からは、仁と美沙が現れた。 「延長コード探すの時間かかったよー!」 仁と美沙の手には、何本ものドライヤーが持たれていた。
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