急襲

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すると、再び杏奈は拳を作り、水を纏わせながら鉄の巨人の胸部を殴りつけ始める。 ドゴンッ!と鉄を殴る鈍い音が響き渡る中、何か考えがあるのか、俺達はその様子を静かに見守った。 何度か殴り付けると、俺が斬りつけた時に出来た裂け目が徐々に膨れ上がり、段々と鉄の巨人の胸部が開かれていく。 やがて、殴りつけていた杏奈の手がピタリと止まり口を開いた。 「良かったわね。コックピットの中は電気を通さないようになってるのね」 杏奈が見ているモノは、この位置からだと見上げているので胸部の様子がわからない。 俺は瓦礫の残骸に登り、杏奈が見ているものを確かめた。 『本当に人が乗っていたんだな』 そこには、鉄の巨人が仰向けになっているのと同様に、胸部の中では一人の男が仰向けになっていた。 胸部の中に作らせた、人間が入れるほどの小さな空間。 仰向けになってはいるが、内部に椅子があり座っていることがわかる。 杏奈はそいつを見下ろしながら、まるで威圧感で拘束を行うかの様に相手にその場から身動きをとらせなかった。 「翻訳モードはオンになってるわね?これから訊くことに嘘を言えば、今度は電線を使って殺す。死にたくなければ、素直に答えなさい」 その言葉に優しさはなかった。
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