急襲

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眉間に険しい皺を寄せながら、舌を出して噛みつく様に口許を歪ませる。 「なっ!」 その様子に一番慌てたのは、男を見下ろしていた杏奈だった。 「やめなさい!」 さっきまで行っていた戦闘とは異質の空気。 自ら命を絶とうとする男の行動に、その場にいる全員が凍りついた。 何がそうさせたのか。 男の行動は脅しなどの類いではなく、自身の舌を必死に噛む姿は苦痛に埋もれている。 杏奈がコックピットらしき空間に飛び降りて、寝転がりながら苦しむ男に掴みかかるが……。 それよりも早く、男の口許に血が飛び散ったのが、離れた場所からでもはっきりと見えた。 抱き起こそうとする杏奈を余所に、体をぐったりとさせている。 「杏奈!」 直ぐ様、仁が杏奈へ近寄った。 「な、なんで舌なんか……」 美沙は体をわなわなと震わせてながら、倒れた男の方に視線を向けていた。 「離れて!」 何かに気付いたのか、杏奈は抱えていた男を地に横たわらせると大声を出してから、直ぐ様走り出す。 その直後、これまで静かに横たわっていたロボットが、突然、閃光を放ち始めた。
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