急襲

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二人が消え行く中、震える手で美沙は俺にケーブルを差し出してきた。 「わかった」 その弱々しく震える手を握り締めて、ケーブルを受けとる。 ここは現実。 仁と杏奈の体が透き通って姿を消していく様は幻想的で、これまでに色々と見てきたけれど、ここが現実であることを意識すると妙な違和感を覚えた。 意識だけではなく、体があの世界へいく。 唐突に浮かぶ一つの考え。 体はあの世界へ。あの世界は本物。 俺は、現実世界で見た黒い星の謎を未だに忘れられないでいた。 この部屋の窓から見た。 ちょうど、こんな風にログインする前だったな。 空を泳ぐ様に流れていた黒い星。 あれはブラックアウトの世界で、ヒカルが乗っていた星に間違いない。 体がゲームの世界へ行けるってことは……。 もしかしたらその逆も可能なんじゃないか? いや……。今はそんなことを考えてもしょうがない。 仁と杏奈の様に躊躇わずとはいかなかったけど、迷ったあげく俺はケーブルで美沙の腕を刺した。 その五分後には、俺も自分の腕を刺してブラックアウトの世界へ飛んだ。
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