急襲

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──気付けば、自分の部屋にいた。 当たり前だが、ログインした時と同じ位置。 「特にいつもと変わらないな」 目の前に立つ仁が、自分の掌をまじまじと眺めながら言った。 確かに……。パソコンと繋いだ時と何ら変わりはない。 「でも、これでこっちが現実になった」 杏奈は早々と自分の荷物を整理しながら、静かな瞳を浮かべ呟く。 ケーブルを自分に突き刺すなんて、正気の沙汰じゃないがこれは成功したってことだよな? ブラックアウトは“現実”には存在しないけれど、自分次第で“現実”に変えられるってことか。 俺は久しぶりに光刀を腰に差した。 この3ヶ月は外に出ることがなかったために、光刀を一度も腰に差すことがなかった。 『何か君の体に違和感があるんだが……。今日はログインするだけで帰らないのか?』 おそらく、早々と皆が家を出る準備をしているからだろう。 光刀は出かけることに気が付き、心なしかその口調は嬉しそうだった。 仁が鎌を背負うと、手には見慣れない物を持っている。 それは掌に収まるほどの大きさで、薄桃色に染められたティアラだった。 ティアラの額部には、ダイヤモンドの様な白い石が幾つか埋め込まれていて輝きを放っている。
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