急襲

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「これをシンデレラが身につければ、王子がどこかの国のお姫様だと誤解するそうだ」 そう言いながら仁は、ティアラを用意しておいた肩掛け鞄の中へ大事そうに入れた。 「海外へはどうやって行くんだ?」 俺の質問に、仁は少し呆れた顔つきで答える。 「成田空港から飛行機で行くんだよ。現実世界と同じで、ちゃんと世界各国へ行ける様になっている。多分、コンピューターがパイロットなんだろ」 その言葉に、ゲームの世界の割には現実に極限まで似せるように作られていて、よく出来ているなあと関心した。 『君に生まれた闘争心が役に立つといいな』 闘争心か。光刀が指した闘争心とは、ユキヤに向けたものだろう。 状況は少し違えど、この空気はまるでゲームを始めたばかりの時のスタートに似ていた。 新しい一歩を踏み出すような。 その始まりは、支給品の確認からで。 美沙がインジェクションを引き当てたんだった。 確かその後は、窓ガラスが割れて……。 『何か来る……』 光刀が、突然、緊張感の籠った声で呟いた。 途端に静けさに包まれる室内。
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