急襲

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仁と杏奈は自身で何かを感じとったのだろう。 二人はその場でじっと立ったまま、床へ視線を向けていた。 感覚を研ぎ澄ましているんだ。 その何かに、鋭敏に反応したのはやはり杏奈の方が速かった。 落ち着いた視線は窓の方へ向けられる。 耳に聞こえてくる金属を刃物で擦る様な高音。 『間違いない。敵意を持っているぞ』 何が来るんだ。 カーテンによって閉ざされているため、窓の向こう側の景色を確認することは出来ない。 向こう側に何かがいるのは間違いない。 「あの時と同じだな」 仁が小さな声で呟く。 俺と同じことを考えていた。 「何?何があるのー!?」 状況を理解出来ない美沙は、一人困惑した顔つきで辺りをキョロキョロと見回していた。 奏でられていた高音は、次第にその音量を増していく。 俺は無意識に、光刀の柄へ手を伸ばしていた。 「伏せて!」 杏奈の言葉を皮切りに、響き渡っていた高音が鳴り止む。 その直後、カーテンは室内に向けて激しく揺れると、窓の向こう側からは目映い光が放たれた。
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