急襲

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硝子の割れ方は、大きな破片が散らばったのではなく細かく砕け散った。 そこから想像するに、何か巨大な物体を激しくぶつけたことが考えられる。 再び醸し出される一瞬の静けさ。 俺達は片膝を立てながら前を見て、敵の動きを窺った。 「壁際に寄って!」 言い放つと同時に、杏奈は立ち上がりながら壁にぴったりと背中をくっつけた。 『素晴らしいアドバイスだな』 杏奈の指示に安心しているのか、光刀の口調は余裕を持った印象だった。 命を狙われる独特の緊張感の中、息を止めて、壁際まで近寄り背中をくっつける。 俺の隣には美沙。反対側の壁際には仁と杏奈が立つ。 視線は窓へ。敵の動きから目を離すことは死を意味する。 その時、アパート全体を揺るがせるほどの振動が走る。 想像を絶する、人とは到底呼べない物体。 窓枠に入りきらない大きさ。 強引に窓枠の外の壁を打ち崩し、出来た穴からカーテンを破りそれは侵入してきた。 「何だよ。あれ……」 それが窓から入ってきたことにより、外から照らされていた光が完全に遮断される。 現れたのは、窓枠よりも巨大な銃口だった。 円柱の形をした巨大な物体。
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