560人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
《まもなく着陸します》
機内に流れる音声に起こされて、瞼を擦りながら窓に視線を向ける。
「え?」
飛行機の窓から見る景色は、あまりにも予想外で戸惑いを隠せなかった。
「凄いな」
既に仁は、窓から見える景色を関心しながら見ている。
「何これー!」
美沙も同じように驚き、杏奈は黙ったまま景色を眺めていた。
着いた先はヨーロッパ。
時刻は現地時間にして午前11時。
「こんなにも違うものなのか?」
仁が驚きながら言うのも無理はなかった。
窓から見る景色は、延々と広がるまっさらな更地。
遠く感じる地平線が、その圧倒的な広さを語っていた。
所々に見える生い茂った草木は、緑と呼ぶのには遥かに及ばないほど数少ない。
その一角に、寂しそうに小さな空港が構えているが見えた。
杏奈は驚く俺達に向かって、淡々とした口調で説明した。
「フィールドの構築が進んでないせいね。ブラックアウトは現実世界をそのまま写したかに見えるけど、システムが完成していない場所は、こんな風にほとんど更地なんだよ」
なるほど。それでほとんど何もないわけか。
飛行機は無事に着陸し、俺達は空港を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!