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杏奈は仁の肩に手を回しながら口を開いた。
「了解。本当は私の水でシンデレラの所へ運んであげたいんだけど、城下町は密集した状態だから着地点が難しいんだ。私は仁君を連れて、ゆっくり山を上がるから先に行って」
「わかった。美沙。姫ティアラとガラスの靴は大丈夫だな?」
「うん!ちゃんと仁から預かってるよー!」
「よし……」
確認を終えると、俺と美沙は仁と杏奈を残して走り出した。
山を登るのに、美沙がいることを考えると15分。
山頂からシンデレラの家まで10分。
だいたい30分かかると考えて9時半か。
そこからシンデレラの準備を整えて、舞踏会へ行くまで1時間。
大丈夫だ。10時半までにシンデレラを舞踏会へ連れていけば、時間はたっぷりある。
険しい山道を二人で慌ただしく登っていくと、山頂に建つ城が近づき視界に大きく見え始めた。
命力を大幅に消費したことによって、足腰が重たい。
美沙は後ろから懸命についてきていた。
「大丈夫か?」
「大丈夫!早く行かないと!」
そう言えば……かぐや姫のクエストの時も山を登ったっけ。
あの時は雨も降っていたし、美沙は熱があるにも関わらず無理をしたせいで転んで怪我をしたんだ。
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫だって!」
不意に過った不安。
もう一度訊くと、美沙は苛立ちを見せた。
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